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生前贈与

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生前贈与は、争族対策として最も一般的かつ強力な手段の一つです。生前に財産を移転することで、相続財産そのものを減らし、誰に何を渡すかを贈与者自身がコントロールできるため、争いの火種を大きく減らすことができます。

🎁 争族を避けるための生前贈与のメリット

1. 財産の移転先と時期を完全にコントロールできる

  • 争族対策上の利点: 遺言書は死後に初めて効力が発生しますが、生前贈与は生存中に「誰に」「いつ」「何を」渡すかを贈与者(親など)が自由に決定し、実行できます。

    • 特定の相続人に特定の財産(不動産、自社株など)を確実に渡すことができます。

    • 受贈者(子や孫)のライフイベント(結婚、住宅購入など)に合わせて支援でき、家族間の信頼関係を深められます。

2. 相続財産を減らし、争いの対象を縮小できる

  • 争族対策上の利点: 生前贈与した財産は、原則として相続財産から除外されます(特定の例外規定あり)。

    • 遺産総額が減ることで、遺産分割の対象となる財産が減り、争いの原因となる「パイの大きさ」が物理的に縮小します。

    • 特に、不動産など分割しにくい財産を生前に処理しておくことで、残された財産の分割が容易になります。

3. 非課税制度を活用した計画的な節税が可能

  • 争族対策上の利点: 贈与税には、相続税よりも有利に活用できる非課税制度が複数用意されています。

    • 暦年贈与: 年間110万円以下の贈与は非課税であり、これを長期にわたり複数人に継続することで、大きな額を非課税で移転でき、最終的な相続税負担を減らせます。

    • 特定の目的の非課税制度: 教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与など、用途が限定的ですが、大きな金額を非課税で渡せる特例があり、若い世代への資金援助を通じて家族の満足度を高められます。

4. 遺留分対策として活用できる

  • 争族対策上の利点: 遺言で特定の相続人に財産を集中させたい場合、他の相続人の遺留分侵害額請求(最低限の取り分を要求する権利)のリスクが残ります。

    • 原則として、生前贈与のうち、相続開始前10年より前に行われた贈与は、遺留分算定の基礎財産に含めなくてもよいため、早期に贈与を始めることで、遺留分による制約を回避しやすくなります。(※ただし、遺留分を侵害することを知って行った贈与などは例外となる場合があります。)

❌ 争族を避けるための生前贈与のデメリット

1. 贈与税の負担が生じる場合がある(税率が高い)

  • リスク: 暦年贈与の非課税枠(110万円)を超えて贈与する場合、相続税よりも贈与税の税率の方が高いため、計画的に行わないと税負担が増大する可能性があります。

    • 特に、多額の財産を一括で贈与しようとすると、多額の贈与税が発生し、結果的に税負担が増える場合があります。

2. 遺留分や特別受益をめぐる争いの原因になる

  • リスク: 特定の相続人に対して多額の贈与を行うと、他の相続人が「特別受益」を主張し、遺産分割協議で揉める原因となることがあります。

    • 特別受益とは、特定の相続人が被相続人から受けた特別の利益のことで、遺産分割時にその利益を持ち戻して計算する必要があります。

  • 対策: 贈与の際に「特別受益に含めない」という意思を明確にするなど、贈与の目的と公平性を他の相続人にも理解してもらう工夫が必要です。

3. 「名義預金」とみなされるリスク

  • リスク: 暦年贈与として毎年現金を贈与しても、贈与契約書を作成していない、受贈者(子や孫)がそのお金の存在を知らない、または贈与者がその通帳や印鑑を管理しているといった場合、「名義預金」とみなされ、税務署から相続財産として認定されるリスクがあります。

  • 対策: 贈与のたびに贈与契約書を作成し、受贈者自身の口座へ振り込み、受贈者自身がそのお金を管理・使用するという明確な事実を残す必要があります。

4. 相続開始前7年(改正後は10年)以内の贈与は相続財産に加算される

  • リスク: 贈与者が亡くなる直前に行われた贈与(現在は相続開始前7年以内、令和6年以降は段階的に10年まで延長)は、原則として相続税の計算上、相続財産に加算されます(贈与税を支払っている場合は控除されます)。

    • 争族対策として有効ですが、節税効果は薄れてしまうため、できるだけ早期に、計画的に贈与を始める必要があります。

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